AIで作った画像は売っていいのか|文化庁の資料で著作権を確認した
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AIで画像を作って売る、あるいはSNSに公開する。これが著作権的に大丈夫なのかを調べると、「グレーゾーン」で終わる記事が大量に出てきます。
実際には、文化庁が公式に考え方を公表しています。 文化審議会の小委員会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」という文書です。
この記事では、その原典を読んで整理しました。
最初に押さえる前提
この「考え方」には法的拘束力がありません。 資料の冒頭にそう書かれています。小委員会としての一定の考え方を示したもので、特定の生成AIについて確定的な法的評価を行うものではないとされています。
そもそも著作権法の解釈は、本来は個別の事案に応じて司法が判断するものです。ただ、AIと著作権を直接扱った判例・裁判例が乏しい状態が続いているため、判例の蓄積を待たずに一定の考え方を示すために作られた文書です。
つまり**「これを守れば絶対に安全」という保証書ではありません。** 現時点でもっとも信頼できる判断材料、という位置づけになります。
3つの観点を分けて考える
資料では、混同しやすい3つを分けるよう求めています。
| 観点 | 何の話か |
|---|---|
| AI開発・学習段階 | 著作物を学習データとして集め、モデルを作る段階(著作権法第30条の4など) |
| 生成・利用段階 | AIで画像を生成し、公開したり販売したりする段階 |
| AI生成物の著作物性 | できた生成物が「著作物」に当たるかどうか |
画像を売る人に関係するのは、下2つです。 学習段階の話はAI開発事業者の問題で、利用者が売るかどうかの判断には直接関係しません。
結論
| 問い | 資料から読み取れる答え |
|---|---|
| AI画像を売ってよいか | 通常の著作権侵害と同じ基準で判断される。特別扱いはない |
| 侵害になる条件 | 類似性と依拠性の両方が認められ、権利制限の対象外のとき |
| 「元の作品を知らなかった」は通るか | 通らない可能性が高い。 学習データに含まれていれば、認識がなくても依拠性が推認される |
| 生成しただけなら大丈夫か | 私的に鑑賞するだけなら許諾不要。ただし公開・販売は別の判断になる |
| AI生成物は自分の著作物になるか | 「生成」ボタンを押すだけでは、ならない |
売る・公開するときの判断基準
生成した画像をSNSにアップロードして公表したり、複製物を販売したりする場合は、通常の著作権侵害と同様の基準で侵害かどうかが判断されます。AIで作ったから特別、ということはありません。
侵害になるのは、生成物に次の両方が認められ、かつ権利制限規定の対象外である場合です。
- 類似性 — 既存の著作物と創作的表現が共通していること
- 依拠性 — 既存の著作物をもとに創作したこと
逆に、どちらか一方でも認められなければ侵害にはなりません。 個人的に画像を生成して鑑賞する行為(私的使用のための複製)など、権利制限規定の対象になる行為も許諾不要です。
生成が適法でも、利用まで適法とは限りません
ここは資料が明示的に注意している点です。
生成の行為が適法に行える場合でも、「生成物の利用」が直ちに適法になるわけではありません。 SNSへのアップロードなど、場面ごとに判断が必要とされています。
「作るのはセーフだから売るのもセーフ」という理解は、資料の整理と合いません。
「知らなかった」は通らない可能性があります
AI画像を売る人にとって、ここがもっとも厳しい部分です。
依拠性について、資料は2つの場合に分けています。
既存の著作物が学習データに含まれていることが立証できる場合
AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも、通常、依拠性があったと推認される
あなたが元の作品を知らなくても、依拠性があったと推認されます。 学習データに入っていたなら、認識の有無は問われません。
学習データに含まれているか不明な場合
権利者が「AI利用者が既存の著作物にアクセス可能であったこと」や「生成物に既存の著作物との高度な類似性があること」を立証すれば、依拠性ありと推認させることができるとされています。
つまり学習データの中身が分からなくても、権利者側は依拠性を立証できます。
例外として挙げられていること
資料には逃げ道も書かれています。その生成AIについて「学習に用いられた著作物の創作的表現が、生成・利用段階において出力される状態となっていない」場合は、利用者がその事情を主張・立証することで、依拠性がないと判断される場合はあり得るとされています。
ただしこれは利用者の側が立証する話です。個人が実際に立証できるかは別問題です。
権利者が取れる措置
侵害が生じた場合、権利者が取り得る措置として次が挙げられています。
- 新たな侵害物の生成の差止め
- すでに生成された侵害物の利用(インターネット配信など)の差止め
- 侵害行為により生成された生成物の廃棄請求
販売していた画像が止まるだけでなく、廃棄を求められる可能性があるという整理です。
AI生成物は自分の著作物になるのか
売る側にとってもう一つ重要なのが、できた画像が自分の著作物になるのかです。
著作権法上の著作物の定義は、①思想又は感情を ②創作的に ③表現したものであって ④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの、です。
資料の整理はこうです。
AIが自律的に生成したものは、著作物に該当しないと考えられます。 資料は自律的に生成したものの例として、人が何ら指示を与えず(または簡単な指示を与えるにとどまり)「生成」のボタンを押すだけでAIが生成したものを挙げています。
一方、人が思想又は感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者になるとされています。
判断されるのは次の2点です。
- 人の創作意図があるか
- 人が創作的寄与と認められる行為を行ったか
なお、著作者になれるのは人(自然人または法人)だけで、AI自体が著作者になることはありません。
「創作的寄与」の判断要素
ここが実務でもっとも効く部分です。資料が判断要素の例として挙げているものを並べます。
| 行為 | 資料の整理 |
|---|---|
| 指示・入力の分量 | 創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。ただし長大な指示でも、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示であれば、判断に影響しない |
| 生成の試行回数 | 試行回数が多いこと自体は、判断に影響しない。 ただし生成物を確認して指示を修正しつつ試行を繰り返した場合は、認められる場合もある |
| 複数の生成物からの選択 | 単なる選択行為自体は、判断に影響しない |
| 加筆・修正 | 人が創作的表現といえる加筆・修正を加えた場合、通常、その加筆・修正が加えられた部分については著作物性が認められる |
読み替えると、こうなります。
- プロンプトを長く書いても、著作権は得られません。 長さではなく、創作的表現を具体的に示しているかで判断されます
- 大量に生成して当たりを引いても、それだけでは得られません
- たくさんの候補から選んでも、選ぶだけでは得られません
- 自分で加筆・修正した部分は、認められます
「呪文を長く書き込んだから自分の作品」という理解は、資料の整理と一致しません。
なお、生成物ごとに個別判断です
資料は、著作物性は個々のAI生成物について個別具体的な事情に応じて判断されるとしています。「AI生成物であること」によって一律に著作物に該当する/しないが決まるものではないと明記されています。
2つの問題は別です
混同しやすいので、資料も注意を促しています。
「AI生成物が著作物となるか」と「侵害になるか」は別個の問題です。
AI生成物が著作物になる場合でも、既存の著作物との類似性および依拠性が認められれば、その生成や利用は既存の著作物の著作権侵害となり得ます。
自分の著作物になることと、他人の権利を侵害しないことは、別に確認する必要があります。
売る前に自分で確認できること
資料の整理から、販売前に確認できる項目を挙げます。
- 特定の作品名・キャラクター名・作家名をプロンプトに入れていないか — 既存の著作物を指示して似たものを生成させた場合、依拠性が認められやすくなります
- 生成物が既存の作品に高度に似ていないか — 高度な類似性は、依拠性の推認材料として挙げられています
- 自分が加筆・修正した部分がどこか — 著作物性が認められるのは、創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分です
- 公開・販売の段階で改めて判断する — 生成が適法でも利用が適法とは限りません
サービスの利用規約は別の問題です。 画像生成サービスごとに商用利用の条件が定められています。著作権法とは別の契約上の制約なので、使っているサービスの規約を必ず確認してください。この記事では扱っていません。
まだ決まっていないこと
資料自体が、今後の検討課題を挙げています。
- 判例・裁判例の蓄積が乏しい状態が続いています。 今後の判例、技術の発展、諸外国の検討状況を踏まえて、「考え方」の見直しを検討するとされています
- 著作者人格権や著作隣接権とAIの関係は、この「考え方」では主に検討されていません。俳優・声優等の声を含んだ実演・レコードの利用との関係も含め、議論を継続するとされています
つまりこの領域は固まっていません。 現時点の整理として読むべきもので、数年後に変わる可能性があります。
まとめ
- AI画像の販売・公開は、通常の著作権侵害と同じ基準で判断される。 AIだから特別ということはない
- 侵害の要件は類似性と依拠性の両方
- 「元の作品を知らなかった」は通らない可能性が高い。 学習データに含まれていれば、認識がなくても依拠性が推認される
- 生成が適法でも、公開・販売まで適法とは限らない。 場面ごとに判断が必要
- 権利者は差止めと廃棄を請求できる
- 「生成」ボタンを押すだけでは、自分の著作物にならない
- プロンプトの長さ、試行回数、候補からの選択は、それ自体では創作的寄与にならない。 自分で加筆・修正した部分は認められる
- 自分の著作物になることと、他人の権利を侵害しないことは別問題
- この「考え方」に法的拘束力はなく、見直しも予定されている
出典・注記
- 2026年10月22日に、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」の【概要】(令和6年4月・文化庁著作権課)を原典で確認して整理しました。本体は令和6年3月15日のとりまとめです
- 改定の有無を確認するため、文化庁著作権課「生成AIをめぐる最新の状況について」(令和7年9月11日)も確認しました。令和7年9月時点でも令和6年3月の「考え方」が参照されており、改定は確認できませんでした
- 文化庁は実務向けに「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)も公表しています。この記事では「考え方」の概要版を対象にしています
- この記事は制度の整理であり、法律相談ではありません。 個別の事案についての判断は、弁護士等の専門家にご相談ください。文化庁も相談窓口を設けています
- AI開発・学習段階(第30条の4)の詳細は扱っていません。 AI開発事業者側の論点であり、画像を売る利用者の判断とは分けて考える必要があるためです
- 各画像生成サービスの利用規約(商用利用の可否、生成物の権利帰属)は確認していません。 著作権法とは別の契約上の制約として、各サービスで確認してください
- 商標権、意匠権、パブリシティ権、肖像権については扱っていません