学生がAI副業で稼いだら確定申告は必要か|扶養と勤労学生控除の境界を国税庁の資料で確認
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AIを使って少しでも収入が出ると、次にぶつかるのが税金です。
検索すると「103万円の壁」「150万円」「178万円」といった数字が出てきますが、媒体によって書いてある金額が違います。 どれを信じればいいのか分かりません。
この記事では、国税庁と自治体の資料で境界を確認しました。あわせて、なぜ記事によって数字が違うのかも説明します。
一部、運営者自身が勤労学生控除を使っている話を含みます(該当箇所に明記しています)。
結論:年収いくらまでなら大丈夫か
まず、アルバイトの給与だけで稼いでいる場合の早見表です(令和8年分)。
| 年収(給与収入) | 自分の所得税 | 親が受けられる控除 |
|---|---|---|
| 136万円以下 | かからない | 扶養控除63万円(満額) |
| 136万円超 〜 178万円以下 | かからない | 特定親族特別控除(63万円から段階的に減る) |
| 178万円超 〜 197万円以下 | かかる | 特定親族特別控除(段階的に減る) |
| 197万円超 | かかる | なし |
迷ったら136万円が目安です。 ここまでなら、自分にも親にも影響が出ません。
この表は所得税の話です。住民税は所得税より先に発生し、基準も自治体ごとに違います(後述)。
数字の出し方はこうです。すべて国税庁の資料にある金額から計算しています。
136万円 = 扶養控除の上限(合計所得62万円)+ 給与所得控除74万円
178万円 = 基礎控除104万円 + 給与所得控除74万円
197万円 = 特定親族特別控除の上限(国税庁に給与収入197万円以下と明記)
交通費は年収に入れません
通勤手当は、非課税の範囲内なら給与収入に含まれません。 上の表の「年収」に交通費を足す必要はありません。
電車・バス通勤の場合、最も経済的かつ合理的な経路・方法による通勤定期券などの金額が非課税です。1か月15万円を超える場合は、15万円が非課税の限度額になります。超えた部分は給与として課税されます。
学生のアルバイトで月15万円の交通費になることはまずないので、実際には交通費は全額、年収の計算から外して考えて問題ありません。 新幹線や特急の運賃も、最も経済的かつ合理的な経路に該当すれば非課税に含まれます(グリーン料金は含まれません)。
源泉徴収票の「支払金額」には非課税の通勤手当が含まれていないので、その金額をそのまま使えます。
AI副業の収入は、この表では判定できません
上の表は給与だけの場合です。AI副業の収入は給与ではないので、この換算が使えません。
AIで稼いだお金は雑所得または事業所得になり、給与所得控除(74万円)が適用されません。判定は「年収」ではなく合計所得金額で行います。
AI副業がある場合に見る3つの数字
| 境界 | 何が起きるか |
|---|---|
| AI副業などの所得が20万円超 | 確定申告が必要になる |
| 合計所得が62万円超 | 親の扶養控除(満額63万円)から外れる |
| 合計所得が123万円超 | 親の控除が完全にゼロになる |
合計所得は、バイトの給与所得とAI副業の所得を足した額です。
合計所得 = (バイトの年収 − 給与所得控除74万円)+ AI副業の所得
たとえばバイトの年収が100万円、AI副業で15万円稼いだ場合はこうなります。
(100万円 − 74万円)+ 15万円 = 合計所得41万円
→ 62万円以下なので、親の扶養控除は満額のまま
→ ただしAI副業が20万円を超えていないので確定申告は不要
確定申告が必要になるのは20万円超
アルバイトをしていて、源泉徴収されている場合の条件はこうです。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
AI副業の収入は給与ではないので、この「各種の所得金額」に入ります。アルバイト先が1か所で源泉徴収されているなら、AI副業の所得が20万円を超えた時点で確定申告が必要になります。
バイト先が2か所以上ある場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と他の所得の合計で判定します。
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の取り扱いは別です。国税庁のページには住民税についての記載がないので、住んでいる自治体に確認してください。
勤労学生控除は、住民税で効く
学生向けの控除として勤労学生控除があります。所得税の控除額は27万円、住民税は26万円です(金額が違います)。
所得税側の要件は3つです。
- 給与所得などの勤労による所得があること
- 合計所得金額が89万円以下であること。かつ、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
- 特定の学校の学生・生徒であること
AI副業をしている学生が引っかかるのは2つ目の後半です。AI副業の収入は「勤労に基づく所得」ではないので、AI副業の所得が10万円を超えると、この控除は使えません。
所得税では、ほとんど効きません
令和8年分の基礎控除は104万円です。 勤労学生控除が使える範囲(合計所得89万円以下)では、基礎控除だけで課税所得がゼロになります。
合計所得89万円(勤労学生控除の上限)< 基礎控除104万円
→ 勤労学生控除を使わなくても所得税は0円
基礎控除が48万円だった令和6年分以前は、勤労学生控除が所得税の非課税ラインを押し上げる役割を持っていました。基礎控除が104万円に上がったことで、所得税での役割はほぼ消えています。
効くのは住民税です
住民税は所得税より先に発生します。 ここが見落とされやすい箇所です。
所得税は給与収入178万円までかかりませんが、住民税の非課税限度額はずっと低いです。東京都の資料では、23区内で同一生計配偶者や扶養親族がいない場合、均等割と所得割の両方が非課税になるのは前年の合計所得金額が45万円以下のときとされています。
つまり、所得税がゼロでも住民税はかかるという範囲があります。学生が最初にぶつかるのは住民税のほうです。
勤労学生控除(住民税26万円)は、この住民税の課税を押し下げます。
AI副業の所得が10万円を超えて勤労学生控除を失うと、影響が出るのはこの住民税です。 所得税では変わらなくても、住民税が増えます。
「均等割だけ払う」という状態があります
住民税は均等割と所得割の2つで構成されています。この2つは判定のしかたが別です。
| 中身 | 非課税の判定 | |
|---|---|---|
| 均等割 | 定額 | 合計所得金額(所得控除を引く前)で判定 |
| 所得割 | 税率10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%) | 所得控除を引いた後の額で計算 |
東京都の場合、均等割は個人都民税1,000円と個人区市町村民税3,000円です。これに加えて、令和6年度から森林環境税が一人年額1,000円、均等割と併せて課税されます。
ただし、この金額は自治体によって違います。 横浜市と比べると、こうなります。
| 東京都(23区) | 横浜市(令和7年度) | |
|---|---|---|
| 均等割(都道府県民税) | 1,000円 | 1,300円(水源環境保全の超過課税で300円上乗せ) |
| 均等割(市区町村民税) | 3,000円 | 3,900円(横浜みどり税900円を含む) |
| 森林環境税 | 1,000円 | 1,000円 |
| 均等割の合計 | 5,000円 | 6,200円 |
| 所得割の税率 | 10%(都4%+区市町村6%) | 10.025%(市8%+県2.025%) |
同じ制度でも、均等割が1,200円違い、所得割の税率も違います。 横浜市では神奈川県の水源環境保全のための超過課税が所得割に0.025%、均等割に300円上乗せされており、市独自の横浜みどり税も年900円かかります。
住んでいる自治体の金額は、その自治体のページで確認してください。
ここが重要です。勤労学生控除は所得控除なので、所得割にしか効きません。 均等割の非課税判定は所得控除を引く前の合計所得金額で行われるため、勤労学生控除では均等割を消せません。
なお、住民税の勤労学生控除の額は26万円です(所得税は27万円)。横浜市の資料でも26万円と記載されています。
つまり、こうなります。
勤労学生控除を使う
→ 所得割が0円になる
→ 均等割(定額)だけが残る
私自身、均等割の支払いだけで済ませるために勤労学生控除を使っています。 所得割は所得に比例して増えますが、均等割は定額です。その差は小さくありません。
勤労学生控除は、申告しないと適用されません
これが一番の注意点です。
勤労学生控除は自動では付きません。確定申告のときに自分で申告する必要があります。 アルバイト先の年末調整で申告する場合も、扶養控除等申告書に記載が必要です。
申告を忘れると、控除が使えないまま所得割がかかります。要件を満たしていても、黙っていれば適用されません。
住民税は「年度」が1年ずれます
住民税は前年の所得に対して翌年度に課税されます。
令和7年分の所得 → 令和8年度の住民税
令和8年分の所得 → 令和9年度の住民税
この記事が扱っている令和8年分の所得は、令和9年度の住民税になります。 上の表は自治体が公表している令和8年度(令和7年分の所得)の内容です。
令和9年度の数字は、所得税側で給与所得控除が74万円・所得要件が合計所得89万円に上がっているため、住民税も同様に引き上げられる見込みです。ただし住民税は地方税で、非課税限度額は自治体ごとに異なります。 正確な数字は住んでいる市区町村の案内で確認してください。
親の扶養はどうなるか
学生本人の税金より、親の税金のほうが影響が大きい場合があります。親が扶養控除を使えなくなると、親の税負担が増えます。
19歳以上23歳未満の大学生の場合、段階が2つあります。
合計所得62万円以下 → 親は63万円の控除(満額)
扶養控除の対象になるのは、年間の合計所得金額が62万円以下の場合です。特定扶養親族に当たる場合、控除額は63万円です。
給与だけで稼いでいる場合、給与収入に直すと136万円以下になります。計算はこうです。
給与所得控除 74万円(給与収入220万円までの場合)
合計所得の上限 62万円
→ 62万円 + 74万円 = 給与収入 136万円
合計所得62万円超123万円以下 → 特定親族特別控除(段階的に減る)
62万円を超えても、親の控除がいきなりゼロになるわけではありません。特定親族特別控除があり、控除額が段階的に下がります。
| 本人の合計所得金額 | 親が受けられる控除額 |
|---|---|
| 62万円超 85万円以下 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 3万円 |
この控除の要件には、19歳以上23歳未満であること、親と生計を一にしていることが含まれます。給与だけの場合、対象は給与収入197万円以下です。
つまり「扶養を1円超えたら親の負担が激増する」という構造ではなくなっています。 62万円を超えてから123万円まで、なだらかに減ります。
合計所得123万円超 → 親の控除はゼロ
ここを超えると、扶養控除も特定親族特別控除も受けられません。
なぜ記事によって数字が違うのか
調べていて一番分かりにくかったのがここです。原因は2つあります。
① 国税庁は「合計所得金額」で書いている
国税庁の資料に書いてあるのは「合計所得金額62万円以下」「89万円以下」です。巷で言われる「年収136万円」「163万円」は、それを給与収入に換算した数字です。
AI副業をしている人にとって、この違いは重要です。AI副業の収入は給与ではないので、給与収入の換算表はそのまま使えません。 合計所得金額で判定する必要があります。
② 年分によって控除額が変わった
給与所得控除と基礎控除が、2年続けて大きく上がっています。
| 年分 | 給与所得控除の最低額 | 基礎控除(合計所得132万円以下) |
|---|---|---|
| 令和2年〜6年分 | 55万円 | 48万円 |
| 令和7年分 | 65万円 | 95万円 |
| 令和8年分・9年分 | 74万円 | 104万円 |
控除額が変われば、同じ「合計所得62万円」でも給与収入の換算値が変わります。だから古い記事と新しい記事で数字が合いません。 「103万円の壁」は令和6年分までの数字です。
記事を読むときは、それが何年分の話なのかを確認してください。
社会保険の扶養は別の制度です(親が会社員などの場合)
ここまでは所得税の話です。健康保険の扶養は税金とは別の制度で、基準も別です。
税金の基準を満たしていても社会保険の扶養から外れることがあり、その逆もあります。こちらは加入している健康保険組合ごとに運用が異なるので、親の勤務先の健康保険組合に直接確認してください。 公的機関の一般論では判断できません。
親が個人事業主で国民健康保険なら、社会保険の壁はない
上の話は、親が会社員などで被用者保険(健康保険)に加入している場合です。
親が個人事業主で、家族が国民健康保険に加入している場合、この壁はありません。
国民健康保険は「被保険者ごとに計算したものを世帯単位で合算し、世帯主の方に納めていただきます」という仕組みです。つまり加入者全員がそれぞれ被保険者で、健康保険の被扶養者に相当する区分がありません。扶養から外れるという概念がないので、130万円のような段差も存在しません。
ただし、保険料は増えます
壁がないことと、影響がないことは別です。
国民健康保険の保険料は、次の項目を組み合わせて計算されます。
| 項目 | 計算のしかた |
|---|---|
| 所得割 | 世帯加入者の所得に応じて計算 |
| 均等割 | 世帯加入者の人数に応じて計算 |
| 平等割 | 一世帯あたりいくらと計算 |
| 資産割 | 固定資産税額に応じて計算 |
所得割は「世帯加入者の所得」で計算されるので、子の所得が増えれば世帯の保険料も増えます。
会社員の親の場合は「一定額を超えた時点で扶養から外れ、自分で保険に入る」という段差ですが、国保は段差がなく、所得に応じてなだらかに増える形です。慌てて収入を調整する必要はありませんが、無関係でもありません。
料率は自治体ごとに違います
東京都の資料には「4つの項目の組み合わせや料(税)率、賦課限度額は、区市町村により異なります」とあります。名称も自治体によって「保険料」と「保険税」に分かれます。
いくら増えるかは、住んでいる市区町村でしか分かりません。 自治体の国保担当窓口か公式サイトで、その年度の料率と計算例を確認してください。
親が個人事業主なら、税金側にもう1つ条件があります
勤労学生控除と特定親族特別控除には、どちらも次の要件が含まれています。
- 青色申告者の事業専従者として、その年を通じて給与の支払を受けていないこと
- または白色申告者の事業専従者でないこと
つまり、親の事業を手伝って専従者給与を受け取っていると、これらの控除は使えません。 親が個人事業主の場合に限って発生する条件なので、該当するなら親の申告内容とあわせて確認してください。
確認すべき場所
数字を扱う話なので、確認先を明示しておきます。
- 所得税の控除と確定申告 → 国税庁タックスアンサー(この記事の出典に挙げたページ)
- 住民税 → 住んでいる市区町村
- 健康保険の扶養(親が会社員など) → 親の勤務先の健康保険組合
- 国民健康保険の保険料(親が個人事業主など) → 住んでいる市区町村の国保担当窓口
- 個別の判断 → 所轄の税務署、または税理士
特に親の扶養に関わる判断は、親と一緒に確認してください。 影響を受けるのは親の税額です。
まとめ
アルバイトの給与だけなら、136万円までは何も起きません。 これが一番覚えておくべき数字です。
- 年収136万円以下 → 自分の所得税なし、親の扶養控除も満額
- 年収178万円まで → 自分の所得税はかからない(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)
- 年収197万円超 → 親の控除がゼロになる
- 交通費は年収に入れない。 非課税の通勤手当は給与収入に含まれません(電車・バスなら月15万円まで)
- AI副業の収入は「年収」の表で判定できない。 給与所得控除が使えないので、合計所得金額で見ます
- AI副業などの所得が20万円を超えたら確定申告(バイト1か所で源泉徴収されている場合)
- 勤労学生控除が効くのは住民税。 所得税では基礎控除104万円の方が大きいため効かない。影響が出るのは住民税側(控除額26万円)
- 住民税は所得税より先に発生する。 所得税は給与178万円までゼロだが、住民税の非課税限度額はずっと低い。基準は自治体ごとに違う
- 勤労学生控除を使うと「均等割だけ」で済む場合がある。 均等割は定額、所得割は所得控除後に計算されるため
- 勤労学生控除は申告しないと適用されない。 確定申告か、バイト先の扶養控除等申告書で申告する
- 記事によって数字が違うのは、年分によって控除額が変わったから。 「103万円の壁」は令和6年分までの数字
- 親が個人事業主で国民健康保険なら、社会保険の壁はない。 被扶養者という区分がないため。ただし所得割は世帯加入者の所得で計算されるので、段差なく保険料は増える
出典・注記
- 数字は2026年10月21日に国税庁タックスアンサーで確認したものです。出典は次のページです。 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人、 No.1410 給与所得控除、 No.1180 扶養控除、 No.1177 特定親族特別控除、 No.1175 勤労学生控除、 No.1199 基礎控除、 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
- 令和8年分から適用される金額を記載しています。税制は改正されます。 申告や判断の前に、必ず最新の情報を確認してください
- この記事は制度の整理です。税務相談ではありません。 個別の事情による判断は、所轄の税務署または税理士にご相談ください
- 均等割・所得割の仕組みと23区の金額は東京都主税局の個人住民税のページ、横浜市の金額と住民税の勤労学生控除額(26万円)は横浜市の税額計算方法のページ(令和7年度分)で確認しました。均等割の額・税率・非課税の基準は自治体により異なります
- 国民健康保険の仕組みは東京都保健医療局の資料で確認しました。料率・賦課限度額・名称(保険料か保険税か)は区市町村により異なります
- 住民税については仕組みと方向性のみ扱いました。非課税限度額は自治体ごとに異なるため、具体的な金額は計算していません。 住んでいる市区町村で確認してください
- 親の勤務先の家族手当については扱っていません
- 国民健康保険料の具体的な金額は計算していません。自治体ごとに料率が違うため、一般化できません
- 青色申告・白色申告の選択、経費の計上方法、事業所得と雑所得の区分については扱っていません