学生がAI副業で仕事を受けるとき、フリーランス法は効くのか|「副業」は書いてあるが、「学生」は書いていない
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クラウドソーシングで、AIを使った記事作成や画像制作の仕事を受ける。学生でもできる副業として、よく挙がる形です。
そこで困るのはだいたい同じところです。報酬が払われない。あとから減らされる。何度もやり直させられる。
この種のトラブルに対して、2024年11月1日からフリーランス法という法律が施行されています。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
では、学生がAI副業で仕事を受けるとき、この法律は効くのでしょうか。
公正取引委員会が出しているパンフレット全36ページを原典で読みました。先に結論を書きます。
- 「学生」という語は、パンフレットに出てきません。 対象かどうかは学生かどうかでは決まりません
- 「副業」は注記に明記されています。 会社に雇われている人が副業で受ける場合は対象だと書かれています
- 相手が消費者なら対象外です。 個人から直接頼まれた仕事は、この法律の外です
- 7つの禁止行為は「1か月以上」の委託だけに効きます。 単発の仕事には効きません
- ただし、募集情報の的確表示義務とハラスメント対策義務には、期間の条件がありません
この記事は制度の整理です。筆者がクラウドソーシングで仕事を受けた記録ではありません。
フリーランス法とは何を定めた法律か
パンフレットの冒頭に、この法律の位置づけが書かれています。
本法は、フリーランスと取引する 全ての事業者が守らなければいけない法律です
目的も明記されています。
個人であるフリーランスと、組織である発注事業者の間における交渉力などの格差、それに伴うフリーランスの取引上の弱い立場に着目し、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために制定された
つまり、発注する側に義務を課す法律です。受ける側が何かをしなければならない法律ではありません。
対象かどうかは、「事業者」かどうかで決まる
パンフレットの「法律上の定義」は、こうなっています。
【特定受託事業者】業務委託の相手方である事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの ① 個人であって、従業員を使用しないもの
ここに出てくる条件は「個人であること」と「従業員を使っていないこと」の2つだけです。年齢も、職業も、本業か副業かも、条件に出てきません。
「副業」は、注記に明記されている
本文のすぐ下に、こういう注記があります。
特定の事業者との関係で従業員として雇用されている個人が、副業で行う事業について、事業者として他の事業者から業務委託を受けている場合には、この法律における「特定受託事業者」に該当します。
本業が別にあっても、副業の部分は対象になると明記されています。ここは確認が取れました。
「学生」は、書かれていない
一方で、パンフレット全36ページに「学生」という語は出てきません。
「学生は対象外」とも書いていませんし、「学生も対象」とも書いていません。書かれていないので、ここでは判断しません。
条文の作りから言えることは、ここまでです。対象かどうかを分けているのは「事業者として業務委託を受けているか」であって、学生かどうかではありません。 自分の取引がこれに当たるかどうかは、後述の相談窓口で確認してください。
相手が「消費者」なら、この法律の外です
ここが、学生にとって一番実害が出やすい部分だと思います。
パンフレットには、対象となる取引がこう書かれています。
事業者からフリーランスへの委託 つまり、「B to B」が対象
そして、対象外も明記されています。
消費者との取引は対象外です。
会社やお店から受けた仕事は対象です。知り合いの個人から「ロゴを作ってほしい」と頼まれた仕事は、対象外になり得ます。
同じ作業をして、同じ金額をもらう約束をしても、相手が誰かで守られ方が変わります。 SNS経由で個人から直接依頼を受ける形は、学生の副業でよくある入り方なので、ここは知っておいたほうがいいと思いました。
なお、フリーランスからフリーランスへの委託は対象だと書かれています。相手が個人でも、その人が事業者として発注しているなら対象です。
発注する側が守らなければならないこと
対象になる場合、発注側には次の義務があります。パンフレットは、発注側の種類によって適用される義務を分けています。
| 発注側 | かかる義務 |
|---|---|
| 業務委託事業者(フリーランスを含む、委託する全ての事業者) | 取引条件の明示義務(第3条) |
| 特定業務委託事業者(従業員を使用する個人、役員が2人以上または従業員がいる法人) | 上記に加えて、報酬支払義務(第4条)、募集情報の的確表示義務(第12条)、ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条) |
口頭だけの発注は認められない
第3条の明示義務について、パンフレットはこう書いています。
取引条件を明示する方法は書面か電磁的方法が認められ、どちらの方法とするかは、発注事業者が選択できます(電話など口頭で伝えることは認められません)。
明示しなければならない事項は8つあります。
- 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
- 業務委託をした日
- 特定受託事業者の給付の内容
- 給付を受領または役務の提供を受ける期日
- 給付を受領または役務の提供を受ける場所
- 給付の内容について検査する場合は、検査を完了する期日
- 報酬の額および支払期日
- 金銭以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること
※ 6と8は、該当する取引の場合のみ
「契約書」でなくてもよいとも書かれています。
「書面」は「契約書」でなくても大丈夫!書面の様式は定められていない
SNSのメッセージでの明示も認められていますが、パンフレットは注意を添えています。
メッセージが削除されたり、閲覧ができなくなる可能性もあるため、発注事業者・フリーランス双方で、その場合の対応を事前に決めておいたり、スクリーンショット等で明示された内容の保存を行うとよいでしょう
スクリーンショットを残しておけ、と公的資料のほうが言っています。
報酬は、受け取った日から60日以内
第4条です。支払期日は、
給付を受領した日から60日以内
で、できる限り短い期間内に定める必要があると書かれています。「月末締め翌月末払い」のような形も認められますが、その場合も60日を超えてはいけません。
7つの禁止行為は、「1か月以上」の委託だけ
ここは誤解しやすい部分です。
フリーランスに【1か月以上】の業務委託をしている発注事業者には、7つの禁止行為が定められています
7つは次のとおりです。
- 受領拒否の禁止
- 報酬の減額の禁止
- 返品の禁止
- 買いたたきの禁止
- 購入・利用強制の禁止
- 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
- 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
「報酬を後から減らされた」「何度もやり直させられた」は、ここに入っています。 学生の副業で一番起きそうなトラブルが、まさにこの7つです。
ただし、効くのは1か月以上の業務委託の場合です。3日で終わる単発の仕事には、この7つは適用されません。
パンフレットはさらに、6か月以上の委託にだけかかる義務(育児介護等との両立への配慮、中途解除等の事前予告・理由開示)も分けて説明しています。
期間が短いほど、守られる範囲は狭くなります。 学生が受けやすいのは短い仕事なので、ここは知っておくべきだと思いました。
期間に関係なく効くものもあります
一方で、期間の条件がついていない義務もあります。
**募集情報の的確表示義務(第12条)**です。
発注事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
この「広告等」の範囲に、クラウドソーシングのプラットフォームが名指しで入っています。
⑥放送、有線放送等(テレビ、ラジオ、オンデマンド放送、ホームページ、クラウドソーシングサービスのプラットフォーム等)
募集に書いてあった条件と、実際の仕事が違う。 これは単発でも対象です。
**ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)**にも、期間の条件はありません。
業務委託の形でも、実質が労働者なら別の法律です
パンフレットに、こういう注意書きがあります。
形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係法令が適用され、本法は適用されません。
契約書の名前ではなく、実態で判断されるということです。時間を指定されて、場所を指定されて、指揮命令を受けて働いているなら、それは業務委託ではないかもしれません。
その場合に効くのは労働基準法のほうで、こちらは最低賃金も残業代もあります。どちらの法律かで、使える武器が変わります。
困ったときの相談先
パンフレットに、相談窓口が明記されています。
フリーランス・トラブル110番
フリーランスと発注事業者等との間の取引上のトラブルについて、フリーランスが弁護士にワンストップで相談できる窓口です。
行政機関への申出の支援もあると書かれています。ただし、
申出書の作成代行、提出代行はできません。
とも明記されています。
取引の適正化に関する内容(第3条〜第6条)は公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備に関する内容は厚生労働省が担当です。
自分のケースが対象になるかどうかは、ここで聞いてください。 この記事では判断できません。
まとめ
- フリーランス法は2024年11月1日施行。 発注する側に義務を課す法律
- 対象は「個人で、従業員を使っていない事業者」。 学生かどうかは条件に出てこない
- 「副業」は注記に明記されている。 「学生」という語はパンフレットに出てこない
- 相手が消費者なら対象外。 知り合いの個人から直接受けた仕事は、この法律の外になり得る
- 取引条件の明示は書面か電磁的方法。口頭だけは認められない。 明示事項は8つ
- 報酬は受け取った日から60日以内
- 7つの禁止行為は「1か月以上」の委託のみ。 単発の仕事には効かない
- 募集情報の的確表示義務とハラスメント対策義務には、期間の条件がない
- 実質が労働者なら、この法律ではなく労働基準法
- 相談先はフリーランス・トラブル110番
AI副業の収入が増えてきたら、税金の側も変わります。そちらは学生のAI副業と税金の記事にまとめました。制作物の権利についてはAIで作った画像の著作権の記事に書いています。
出典・注記
- 2026年10月29日に、公正取引委員会「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレット」全36ページを原典で確認しました。本文中の引用はすべて同パンフレットの原文です
- 施行日(令和6年11月1日)、特定受託事業者・特定業務委託事業者・業務委託事業者の定義、明示事項8項目、支払期日60日、7つの禁止行為、適用される義務の区分(業務委託事業者/特定業務委託事業者/一定期間以上)は、いずれも同パンフレットの記載によります
- 「副業で行う事業について、事業者として他の事業者から業務委託を受けている場合」に関する記述は、同パンフレット「対象となる事業者」の注記1によります
- 「学生」という語は、同パンフレットに見当たりませんでした。 学生が対象になるかどうかについて、この記事では判断していません。対象・対象外のいずれとも書かれていないため、書かれていないと書いています
- 相談窓口の記載は、同パンフレットおよび公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」(2026年10月29日確認)によります
- 確認したのは上記のパンフレットと特設サイトのみです。 条文そのもの、政令・省令、ガイドライン、Q&A集は確認していません。網羅的に調べたものではありません
- 制度は改正されます。 最新の内容は公正取引委員会のサイトで確認してください
- この記事には広告リンクがありません。 紹介料を受け取る関係にあるサービスには触れていません
- この記事は公開されている制度資料の整理であり、法律相談ではありません。 個別の取引が法の対象になるかどうかは判断していません。実際のトラブルは、フリーランス・トラブル110番、公正取引委員会、都道府県労働局、または大学の学生相談窓口へ
- 筆者がクラウドソーシングで仕事を受けた体験の記録ではありません。 受けた場合は、その旨を記事内に明記します