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オワハラは違法なのか|厚労省の指針を原典で読むと、罰則はなく「違法」の語は別の行にあった

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内々定の連絡と一緒に、「他社の選考はすべて辞退してください」と言われる。内定承諾書を今週中に出すよう求められる。いわゆるオワハラです。

そこで気になるのは、それは違法なのか、そして承諾書を出してしまったら、もう辞退できないのか、の2つだと思います。

オワハラについて定めた厚生労働省の指針を、全17ページ原典で読みました。根拠になっている法律の条文と、労働局・ハローワークが学生向けに書いている資料もあわせて確認しています。先に結論を書きます。

  • オワハラの行は「行わないこと」で終わっています。 同じ指針の別の行には「罰則の対象となる」と注記があるのに、オワハラの行にはありません
  • 「違法」という語は、指針全体で1回だけ出てきます。 それはオワハラの行ではなく、企業が内定者に辞退を迫る行のほうです
  • 根拠の法律にも、指針違反そのものを罰する条文は見当たりませんでした。 国ができるのは助言・指導・勧告です
  • 内定承諾書を出したあとの辞退について、京都新卒応援ハローワークは「法的に問題はないと考えられます」と書いています
  • ただし厚労省の事業主向けQ&Aは、内定辞退で損害賠償になる場合も「考えられます」と書いています。 両方を並べておきます
  • 相談先は、都道府県労働局・新卒応援ハローワーク・大学のキャリアセンターです。総合労働相談コーナーは「学生、就活生からの相談」も受けると明記しています

この記事は公開されている公的文書の整理です。筆者がオワハラを受けた記録ではなく、法律相談でもありません。

オワハラを定めているのは、法律ではなく指針

「オワハラ」という語は、法律にも指針にも出てきません。指針の本文を検索しても0件でした。

定めているのは、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)第7条にもとづく指針です。正式名称は長いので先に書いておきます。

青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針

平成27年厚生労働省告示第406号で、いま公開されている版は「最終改正 令和8年厚生労働省告示第53号」、令和8年10月1日適用のものです。

法律の第7条は、指針をつくる根拠だけを定めています。

厚生労働大臣は、第四条及び前条に定める事項についての必要な措置に関し、事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するために必要な指針を定め、これを公表するものとする。

つまり、法律が「指針をつくりなさい」と言い、指針の中にオワハラの行がある、という二段の構造です。

オワハラの行は「行わないこと」で終わっている

指針の中で、オワハラにあたる行はこれです。

採用内定又は採用内々定を行うことと引換えに、他の事業主に対する就職活動を取りやめるよう強要すること等青少年の職業選択の自由を妨げる行為又は青少年の意思に反して就職活動の終了を強要する行為については、青少年に対する公平かつ公正な就職機会の提供の観点から行わないこと。

対象は2種類あります。

  • 内定・内々定と引き換えに、他社の就活をやめるよう強要すること
  • 本人の意思に反して、就活の終了を強要すること

「内々定」と明記されているので、正式な内定の前の段階でも対象です。

この行の終わり方に注目してください。「行わないこと」です。

同じ指針の中には、違う終わり方をする行があります。たとえば労働条件の明示についての行です。

労働条件の明示に関し、労働基準法第十五条第一項の規定に違反した場合は、同法第百二十条第一号の規定により、罰則の対象となることに留意すること。

罰則がある事項には、指針自身が「罰則の対象となる」と書いています。 虚偽の求人についても同じ書き方の行があります。オワハラの行には、この注記がありません。

なお、政府が毎年出す就活日程の要請文書は、もっと強い言い方をしています。「職業選択の自由を侵害するおそれがある許されない行為」です。こちらは就活はいつから始まるのかで引用しました。強い言葉ですが、要請にも法的拘束力はありません。

「違法」という語は、内定辞退を迫る行のほうにある

指針の全文で「違法」を検索すると、1件だけ出てきます。オワハラの行の、ひとつ手前です。

採用内定者について、労働契約が成立したと認められる場合には、当該採用内定者に対して、自由な意思決定を妨げるような内定辞退の勧奨は、違法な権利侵害に当たるおそれがあることから行わないこと。

これはオワハラとは向きが逆です。企業が、内定者に「辞退してくれないか」と迫ることについての行です。内定を出したあとで採用を減らしたい企業が、取消しの代わりに辞退を促す、という場面を想定しています。

さらにその手前には、内定取消しの行があります。

事業主は、採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消しは無効とされることについて十分に留意し、採用内定の取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずること。

並べるとこうなります。

指針の行 中身 指針の書き方
内定取消し 企業が内定を取り消す 合理的な理由を欠けば「無効とされる」
内定辞退の勧奨 企業が内定者に辞退を迫る 「違法な権利侵害に当たるおそれがある」
オワハラ 企業が他社の就活をやめさせる 「行わないこと」

指針がはっきり法的な効果に触れているのは、内定取消しと辞退の勧奨のほうです。 オワハラの行は、法的な評価に触れていません。

ただし、「違法と書いていない」は「合法」という意味ではありません。 個別の行為が違法かどうかは、指針ではなく、具体的な事情をもとに裁判所が判断することです。この記事では判断しません。

指針に反しても、罰則の条文は見当たらなかった

根拠の法律のほうも確認しました。国がとれる手段として書かれているのは第28条です。

厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主、職業紹介事業者等、求人者及び労働者の募集を行う者に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

助言・指導・勧告です。罰則の条文もありますが、たとえば第39条はこうです。

第二十八条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。

罰せられるのは「報告をしない・嘘の報告をする」ことで、指針に反したこと自体ではありません。 ほかの罰則の条文も、委託募集など別の規定の違反についてのものでした。

条文を読んだ範囲では、指針違反そのものを罰する規定は見当たりませんでした。 運用の実態や裁判例までは調べていません。

ここまでをまとめると、オワハラは「罰則のある違法行為」として定められてはいません。 国が企業に「行わないこと」と求め、守らなければ助言・指導・勧告ができる、という位置づけです。

内定承諾書を出したあとでも、辞退できるのか

ここが一番気になるところだと思います。公的機関の記述が2つあり、書いている方向が少し違います。

京都新卒応援ハローワークの説明

学生向けのページに、こう書かれています。

憲法22条の規定(「職業選択の自由」)により、内定承諾書を提出した後でも、民法第627条に準じて2週間以上前に解約(内定辞退)の申し入れをすることは、法的に問題はないと考えられます。

民法第627条は、期間の定めのない雇用契約は、申し入れから2週間で終了できるという条文です。内定承諾書を出していても、2週間以上前に辞退を申し入れることは「法的に問題はないと考えられます」、という説明です。

ただしこれは一つのハローワークのページで、全国共通の見解として出されたものかどうかは確認できていません。語尾も「考えられます」です。

厚労省の事業主向けQ&A

厚生労働省の「スタートアップ労働条件」というサイトに、事業主向けのQ&Aがあります。まず、内々定の辞退についてです。

学生・労働者が内々定を辞退する場合には職業選択の自由(憲法22条1項)もあるために、原則として内々定の辞退が違法になるということは考えにくいところです。

正式な内定のあとの辞退については、こう書かれています。

労働者側からの内定辞退も、それが合理的な理由が認められないのであれば損害を賠償しなければならない場合も考えられます。

一方で、同じQ&Aにこうもあります。

労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできないため、損害賠償責任に止まります。

2つを並べると

  • 内々定の辞退は、「原則として違法になるということは考えにくい」
  • 内定の辞退も、入社を強制されることはない。ただし事情によっては損害賠償になる場合も「考えられる」
  • 承諾書を出したあとでも、2週間以上前の申し入れは「法的に問題はないと考えられる」(京都新卒応援ハローワーク)

どれも語尾は「考えられる」で、断定ではありません。辞退できるかどうかと、辞退したときに一切の責任が生じないかどうかは、別の話として書かれています。

不安があるなら、辞退する前に下の相談先に聞いてください。

労働局の資料が挙げている「オワハラに該当しうる例」

長野労働局のサイトに、学生向けの1枚ものの資料「これから就職活動を行う学生の皆さんに知っておいていただきたいこと」が掲載されています。そこに例が3つあります。

・他社の就活が物理的にできないよう研修等への参加を強要 ・内々定の段階で、内定承諾書の提出を求められた。 ・内々定辞退を申し出たにもかかわらず、何度も説明を受けた。

「内々定の段階で内定承諾書の提出を求められた」が、オワハラに該当しうる例として挙がっています。

同じ資料には、こういう見出しもあります。

3.内々定・内定の辞退は、就活生の正当な権利です。

その下の一文です。

「企業に迷惑をかけるから」などと考える必要はありません。

就活エージェントについては、指針のオワハラの行には出てこない

指針には、職業紹介事業者(就活エージェントはこれにあたります)が講ずべき措置をまとめた章もあります。その章を確認しましたが、オワハラや内定辞退を直接扱う行は見当たりませんでした。 オワハラの行の主語は事業主、つまり採用する企業です。

一方で、政府の就活日程の要請文書は、就活エージェントから他社の就活の終了を迫られる事例を名指しで書いています。こちらも就活はいつから始まるのかに原文を載せました。

エージェントが職業紹介の許可を受けた事業者かどうかは、厚労省のサイトで調べられます。手順は就活エージェントを厚労省のサイトで調べるに書きました。

相談先

長野労働局の資料は、相談先を3つ挙げています。

まずは都道府県労働局、新卒応援ハローワーク、大学キャリアセンターに相談を!

労働局などに置かれている総合労働相談コーナーの案内ページには、こう書かれています。

学生、就活生からの相談もお受けします。

予約不要、ご利用は無料です。

どこも紹介料で動いている窓口ではありません。

まとめ

  • オワハラを定めているのは、若者雇用促進法第7条にもとづく厚労省の指針(平成27年厚生労働省告示第406号)。「オワハラ」という語自体は出てこない
  • オワハラの行は「行わないこと」で終わる。 罰則のある事項に付いている「罰則の対象となる」の注記は、この行にはない
  • 「違法」の語は指針に1回だけ。 企業が内定者に辞退を迫る行にある
  • 法律で国ができるのは助言・指導・勧告。 指針違反そのものを罰する条文は見当たらなかった
  • 「違法と書いていない」は「合法」ではない。 個別の判断は裁判所がする
  • 内定承諾書を出したあとでも、2週間以上前の辞退の申し入れは「法的に問題はないと考えられる」(京都新卒応援ハローワーク)。ただし内定辞退で損害賠償の場合も「考えられる」(厚労省Q&A)
  • 内々定の段階で承諾書を求められるのは、オワハラに該当しうる例として労働局の資料に載っている
  • 相談先は都道府県労働局・新卒応援ハローワーク・大学のキャリアセンター

出典・注記

  • 指針は「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号、最終改正 令和8年厚生労働省告示第53号・令和8年10月1日適用)です。厚生労働省のPDF全17ページで確認しました(2026年11月6日確認)。オワハラ・内定辞退の勧奨・内定取消しの行は、いずれも「第二」の「一 労働関係法令等の遵守」の中にあります
  • 「違法」「オワハラ」「内々定」の出現回数は、PDFから抽出した全文を検索した結果です
  • 法律の条文は「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号)をe-Gov法令検索のデータで確認しました(2026年11月6日確認)。罰則の有無は条文の文言から判断したもので、運用や裁判例は調べていません
  • 内定承諾書と民法第627条の記述は、京都新卒応援ハローワーク「内定後のこと」によります(2026年11月6日確認)。一つのハローワークの説明で、全国共通の見解かどうかは確認していません
  • 内々定・内定の辞退と損害賠償の記述は、厚生労働省「スタートアップ労働条件」の事業主向けQ&Aによります(2026年11月6日確認)
  • 「オワハラに該当しうる例」は、長野労働局のサイトに掲載されている「これから就職活動を行う学生の皆さんに知っておいていただきたいこと」によります(2026年11月6日確認)。資料内に作成日の記載はありません
  • 総合労働相談コーナーの記述は、厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」によります(2026年11月6日確認)
  • この記事は公開されている公的文書の整理であり、法律相談ではありません。 自分の場合に辞退してよいか、言われたことがオワハラにあたるかは、都道府県労働局、新卒応援ハローワーク、大学のキャリアセンターにご相談ください
  • 筆者がオワハラを受けた体験の記録ではありません。 この記事に広告リンクはありません